襟は服の印象を決める要のパーツです。とくに台襟付きのシャツカラーは、きちんとした見た目と着心地を両立させるために、手順と精度が重要になります。
本記事では、襟の作り方の基本から、台襟と身頃をきれいに合わせる実践手順までを、要点を押さえて解説します。
道具選び、型紙の理解、接着芯や伸び止めの最新情報、縫製の順序、仕上げのコツまで通しで学べる内容です。初めての方はもちろん、仕上がりの精度を一段引き上げたい方にも役立つ実用ガイドです。
目次
襟の作り方 基本の流れと必要な道具
襟作りは、素材の下準備から縫製、取り付け、仕上げの順に進めるのが基本です。
最初に生地を地直しし、必要なパーツを正確に裁断し、接着芯や伸び止めを適切に貼ります。次に上襟と下襟を縫い合わせ、台襟を作成し、襟と台襟を合体。最後に台襟を身頃へ取り付け、整えとステッチで仕上げます。
重要なのは、合印とロールラインの管理、アイロン工程の丁寧さ、そして角出しやトンネル縫いなどの細部処理です。これらが襟の立ち上がり、首への沿い、見た目の端正さを左右します。
用意する道具と素材チェックリスト
襟の精度は道具で大きく変わります。以下を目安に準備しましょう。
- ミシン針 9〜14号 生地に合わせる。シャツ地には11号が汎用
- ミシン糸 60〜80番。表に出るトップステッチは質の良い糸を推奨
- 接着芯 織り芯中心。生地に合わせた厚みをテスト
- 伸び止めテープ バイアスとストレートを用意
- アイロンと当て布、仕上げ馬や袖万、ステッチ定規
- エッジステッチ押さえ 2mmまたは3mm幅が便利
- 目打ち、角出し棒、細幅の両面テープや布用接着剤
- 裁ちばさみ、ロータリーカッター、定規、布用チャコ
生地選びや芯の相性を必ずハギレでテストし、縮みやテカリ、芯の浮きを事前に確認します。これが失敗を防ぐ最短ルートです。
生地選びと難易度の目安
初めての方は、平織りのシャツ地やブロード、ライトオックス、薄手デニムなど伸びの少ない布が扱いやすいです。
高密度のタイプライターや厚手リネンはコバの出方が美しい一方、角が分厚くなりやすいため段差処理が必須。ニットやストレッチは、伸び管理と芯選びに慣れが要るため上級向けです。
柄物は左右対称の確認が必要で、起毛や方向性のある生地は裁断方向を統一します。難易度は、生地の厚みとハリ、そして芯との相性で決まります。
型紙と寸法の基礎 襟の構造を理解する
襟は上襟と下襟、表台襟と裏台襟の4パーツが基本構成です。
縫い代は一般的に1cm設定。角やカーブ部は仕上がりに直結するため、合印の位置、返り線 ロールライン の把握が必須です。上襟は返り分として下襟よりわずかに大きく取り、縫い合わせると自然に表へ転び、縁が見えにくくなります。
下は代表的な襟タイプの比較です。
| 襟タイプ | 難易度 | 特徴と向く生地 |
|---|---|---|
| シャツカラー 台襟付き | 中〜上 | フォーマルも可。中厚の織り芯と平織り綿が扱いやすい |
| バンドカラー 台襟のみ | 中 | 軽快で首回りすっきり。薄〜中厚生地。芯はやや柔らかめ |
| フラットカラー 丸衿など | 初〜中 | 見返し処理が要点。薄手〜中薄手でドレープがきれい |
パーツ名称と役割
上襟は表に見えるパーツで、返り線を境に首元から前に倒れます。下襟は肌側に当たり、上襟の土台として形を安定させます。
台襟は首の円周に沿って立ち上がる帯状の部位で、表台襟は外側、裏台襟は内側です。表台襟にやや強めの芯を、裏台襟はやや柔らかめで肌当たりを優先するのが定番です。
前端、カーブ頂点、肩線、後中心には必ず合印を入れ、縫製時のズレを防ぎます。
ロールラインと返り分
ロールラインは襟が折れ返る線で、アイロンで軽くクセ取りして立体感を与えます。
返り分は上襟を下襟より0.5〜2mm程度大きくする考えで、これにより縁が自然に裏へ回り、表側に下襟がのぞくのを防げます。生地が厚いほど返り分はやや増やし、薄いほど控えめに。
コバステッチ幅 2〜3mm と返り分のバランスを整えると、縁が波打たず、シャープな仕上がりになります。
接着芯と伸び止めの最新トレンド
襟のハリや耐久は芯選びと貼り方で決まります。近年は低温でしっかり接着する織り芯や、洗濯耐久に優れた芯、カーブに追従する薄手の経編芯など選択肢が増えています。
貼り方はブロックフュージング 生地に先貼り が精度面で有利。さらに衿ぐりや前端には伸び止めテープを併用し、縫製中の伸びや型崩れを防止します。芯は必ずハギレで試し、光沢やゴワつきの有無を確認しましょう。
接着芯の種類と選び方
織り芯は伸びが少なく、シャツカラーのエッジをシャープに保ちます。薄手の平織り綿には中薄〜中厚の織り芯、厚手やハリの強い布には薄手の芯で過剰な硬さを避けます。
経編 トリコット 芯はカーブ追従性がよく、ソフトな着心地が狙いの裏台襟に向きます。ニットやストレッチには伸縮対応芯を。
最新情報です。低温短時間でムラなく付く芯は、生地の熱ダメージを抑え、量産でも安定した結果を得やすくなっています。
伸び止めテープの活用とアイロンのコツ
衿ぐりカーブにはバイアス方向の伸び止め、前端や肩線には地の目方向のテープが適します。
アイロンは押し当てて置くプレスを基本に、滑らせないのが鉄則。温度は芯の指定に従い、当て布を使い30〜40秒程度しっかり冷まし定着させます。
合印付近は剥がれやすいため端から5〜7mm内側まで均等に貼り、必要に応じて角部だけテープを重ねて強度を出します。
台襟付きシャツカラーの作り方 手順
台襟付きは工程が多いものの、手順を守れば難しくありません。上襟と下襟は先に完成させ、台襟を表と裏で作り分け、最後に合体させます。
縫い代は角で重ならないようカットと段差落としを徹底し、コバステッチは一定幅で直線的に。角の先端は縫い止まりをミリ単位で合わせ、糸締めと整形で先端を出し過ぎないのが上品に見せるコツです。
次の各工程を順に行いましょう。
上襟と下襟を縫う 角を美しく出す
上襟にしっかりめ、下襟にやや柔らかめの芯を貼ります。左右対称を保つため、裁断は見本兼用の型紙を使い、目方向を厳密に合わせます。
中表で外周を縫い、角は止まり位置の1〜2目手前で針を落とし微調整。縫い代は角で45度に切り落とし、さらに片側だけを0.5cm、もう一方を0.3cmへグレーディングして段差を作ります。
返したら目打ちで突きすぎず、糸を軽く引いて角の縫い目を内へ収めるトンネル縫いの考えで整え、2〜3mmのコバでステッチします。
台襟の作り方 表台と裏台
表台襟はやや強めの芯で形状保持、裏台襟は首当たりを優先して柔らかく。前端と上端のカーブは伸び止めテープで安定させます。
表台と裏台を中表に合わせ、上端を縫い合わせて表へ返し、ロールライン方向にクセ取り。裏台の下端は1cm折り上げてアイロンで折り目を確定しておきます。
縫い代は上端で段差落とし、コーナーは角の余分を丁寧に落とします。上端に均一なコバステッチをかけると、後の落としミシンが安定します。
襟と台襟の合体とトップステッチ
完成した襟の下側カーブを、開いた状態の表台襟に合印で合わせます。襟先の左右高さを厳密に揃え、中心と前端を先に固定。
縫い代は割らずに台襟側へ倒す想定で、縫い合わせ後に余分をカットし段差落とし。表面から2〜3mmのコバで上端をぐるりとステッチし、左右の角の位置を左右対称に保ちます。
ステッチ幅は揃えるほど既製品のように見えます。押さえをコバ押さえに替えると精度が上がります。
チェックポイント早見
- 返り分 上襟をわずかに大きくして縁が表に出ない
- 段差落とし 厚い側の縫い代を薄くしてコバの段差を抑制
- 合印管理 中心と前端、肩線でズレをゼロに
身頃への取り付け 台襟と身頃の合わせ方
身頃への取り付けは、外台襟 表台 を先に身頃へ縫い付け、内側の裏台で縫い代を包むのが基本。
衿ぐりは縫製中に伸びやすいため、前もってステイステッチ 0.5cm で伸び止めを入れ、合印を信号機のように段取りの基準に使います。
落としミシンは表から縫い目が目立たない位置へ落とし、前立てとの高さ、ボタン位置の整合を最後に確認して完了です。
衿ぐりの準備 ステイステッチと合印
前立てや見返しを先に完成させ、衿ぐり一周に0.5cmのステイステッチを入れて伸びを管理します。カーブの頂点、肩線、後中心、前端に明確な合印を付けます。
伸び止めテープは肩線から後中心にかけてストレートで、前端のカーブは薄手のバイアステープを使用。これで縫製中の波打ちや寸法ズレを予防できます。
身頃と台襟の縫い始めは、前端の縫い代が重なるため目詰まりしやすいので、紙端材を段差解消に使うと綺麗に入ります。
外台襟を身頃に縫い付ける
表台襟と身頃を中表で合わせ、合印から合印へと短い距離を順にクリップで固定します。引き回すのではなく、カーブを少しずつはめ込む意識が大切です。
1cmで縫い合わせ、身頃側のカーブに浅めの切り込みを数カ所入れて馴染ませます。縫い代は台襟側へ倒し、アイロンで落ち着かせます。
この時点で前端の左右高さと、前立ての幅が完全にそろっているかを確認し、必要なら微調整します。
裏台襟の始末と落としミシン
裏台襟の下端を1cm内側に折り、先ほどの縫い代を包むように被せます。細幅の両面テープや布用接着剤で仮固定すると、まち針の凹凸が出ず表面が安定します。
表側から台襟と身頃の縫い目の溝に沿って落としミシンを行い、裏の折り山を確実に捕まえます。角部はひと目分手前で一時停止し、針を落として向きを変えると歪みません。
最後に上端と前端をコバで一周ステッチして、全体の表情を整えます。
まとめ
襟作りは、型紙の理解、芯と伸び止めの適正、アイロンワーク、そして精密なステッチの積み重ねです。
上襟と下襟の返り分、段差落とし、合印管理を徹底し、台襟は表台と裏台の役割を分けて設計。外台を先に身頃へ、裏台で包んで落としミシンという順序を守れば、端正な仕上がりに到達します。
まずはブロードなど扱いやすい生地で手順を体に覚えさせ、道具と工程を最適化してください。精度が上がるほど、襟は静かに美しく立ち上がります。
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