ファスナーの長さが手持ちの布に合わず「長さ調整をしたい」と考えたことはありませんか?
特にプラスチック製ファスナーは布を縫い合わせずに手軽に加工でき、ミシンがなくても作業が可能です。最近はファスナー調整用の便利な部品や工具も増えており、DIYでの調整が容易になっています。
この記事では、プラスチックファスナーの特徴や長さ調整の手順、必要な道具とコツを詳しく解説します。初めてでもわかりやすいように工程ごとにご説明するので、ファスナー調整に不安がある方も参考にしてください。
目次
プラスチック製ファスナーの長さ調整方法
プラスチック製ファスナーは軽量で色も豊富なため、バッグや衣類、小物などさまざまな手芸に使われます。既製品のファスナーは30cm・50cmなど規格サイズで販売されていることが多いですが、必要な長さがその通りでない場合もあります。そんなときは自分で長さを調整する必要があります。
プラスチックファスナーの長さ調整は、ファスナーを構成する「テープ」「歯(エレメント)」「スライダー」「上止め・下止め」などのパーツを理解して行うことが重要です。金属製ファスナーとは違い、プラスチックの歯は一つずつ切り取ることができるため、手縫いやミシンを使わずに長さを短くしたり、パーツを足したりできます。
基本的な流れは、調整したい長さを測って印をつけ、余分な歯やテープを取り去り、新しい止め具を取り付けるという手順です。以下では、具体的にどのような場合にプラスチックファスナーの長さ調整が必要なのか、また調整前に知っておきたいチェックポイントを見ていきます。
長さ調整が必要な場面
手芸でバッグやポーチ、洋服を作るときに型紙に合わせてファスナーを使いたい場面があります。たとえば型紙にファスナーのサイズが30cmと書いてあるのに、手持ちのファスナーが40cmしかない場合です。
また、ファスナーは長さが合わないと装着できないことがほとんどなので、市販の規格品でジャストサイズのものが手に入らないときは自分で調節する必要があります。
さらに、買い置きや手元にあるファスナーを有効活用したいときにも長さ調整が役立ちます。規格以上に長いファスナーでも、自分で短くすれば使えるのです。
プラスチックファスナーの種類と特徴
プラスチックファスナーには大きく分けて「コイルファスナー」と「ビスロンファスナー(射出成形ファスナー)」の2種類があります。
コイルファスナーは歯が螺旋状になった柔らかい構造で、薄手の衣料品やスポーツウェアによく使われます。エレメントが糸でつながっており、金属よりも柔軟性があります。
ビスロンファスナーは樹脂をテープに射出成形して作ったもので、エレメントはそれぞれプラスチック製の硬い歯です。カラーバリエーションが豊富で、バッグやアウトドア用品など耐久性が求められる場面で使われることが多いのが特徴です。
どちらもプラスチック製ですが、コイルファスナーは歯の構造が柔らかいためハサミで切りやすく、歯を少しずつ取り去って長さ調整できます。ビスロンファスナーは歯が硬いので、専用の工具でエレメントを外したり新しい上止めパーツを取り付けたりする必要があります。
長さ調整前の準備と確認事項
長さ調整を始める前に、必ず下準備をしましょう。まず作業スペースを確保し、必要な道具を揃えます。次にファスナーの開閉タイプ(オープンファスナーかクローズドファスナーか)を確認します。
オープンエンド(開くタイプ)のファスナーであれば、下止めを外すことでスライダーを取り外せる場合があります。一方、クローズドエンド(閉じるタイプ)のファスナーは一体型で下止めを外せないため、一般的には上止めを切る方法で調整します。
また、完成後の仕上がり長さをミリ単位で正確に測り、チャコペンやテープで印をつけておくと失敗が防ぎやすいです。印をつける目安は下止めや上止めからの距離になります。
ファスナー長さ調整に必要な道具と材料
プラスチックファスナーの長さ調整には専用の工具があると作業がスムーズです。基本的には以下の道具と材料を揃えれば安心です:
- ラジオペンチや平ペンチ:ファスナーの止め具(上止め・下止め)を挟んで固定したり外したりするのに使います。
- 喰切(くい切り)またはナイフ:ビスロンファスナーの歯(エレメント)を外すために使います。爪切りタイプの「市販の喰切」が便利です。
- ハサミ:テープ裁断用。調整後の余分なテープを切り取ります。
- 定規・チャコペン:必要な長さを正確に測ってマークするのに使います。
- ファスナースライダー用留め具(上止めパーツ・下止めパーツ):切断後に新しく取り付ける金具です。ビスロンファスナー向けにYKKなどから専用上止めが販売されています。
- 布用接着剤(ファスナーメイト):テープのほつれ止めや上止め固定の補強に使えます。
【ポイント】プラスチックファスナーの長さ調整では、スライダーが滑らかに動くよう歯や止め具を正確に取り付けることが大切です。高精度な定規やルーペがあると作業しやすくなります。また、ハサミによる切断の際はテープが裂けないようにゆっくり慎重に行ってください。
基本的な道具の使い方
ラジオペンチ・平ペンチ:上止め・下止めの金具は固くはさまっているので、ペンチで強く挟んで動かせます。上止めを固定したり、外すときに使います。ペンチを使う際は、金具を傷つけないようクッション材(布切れなど)をかませると良いでしょう。
喰切:ビスロンファスナーのエレメントは固いプラスチックなので、専用の喰切で歯を一つずつ外していきます。歯の溝に合わせて刃を当て、少しずつ歯を取り除いて長さを調整します。エレメントをまとめて取り去りたい場合は、エレメントを挟んで削っていく方法がおすすめです。
接着剤:テープのほつれ防止や上止め固定の補強に使います。例えばファスナーメイトは布用接着剤で、押さえ縫いや端処理が難しいときに役立ちます。使用後はしっかり乾かしてから次の工程に進みましょう。
プラスチックファスナーの長さを短くする手順
プラスチックファスナーの長さを短くする基本的な手順は次のとおりです。ミシンを使わず手作業で仕上げる方法なので、初心者でも実践しやすいです。
1. 仕上がり長さを測る・印をつける:下止めや上止めから必要な長さを正確に測り、チャコペンでマークします。たとえば20cmのファスナーを15cmにしたい場合、下止め(閉じ止め)から15cmの位置に印をつけます。
2. 下止めを取り外す:オープンエンドタイプの場合は下止めの金具をペンチで挟み、動かせる状態にしてから引き抜きます。クローズドタイプ(下止めが一体化している)の場合はこの工程は飛ばし、代わりに上止め側から切り込みます。
3. 余分な歯を外す:印をつけた位置までエレメント(務歯)を取り外します。ビスロンファスナーの場合は喰切で歯を割りながら外していき、必要に応じてマークより1~2個多めに外しておきます。コイルファスナーの場合は歯そのものを外しづらいので、ミシンや手縫いで折り返して留める方法もありますが、チェーン状の部分を切って長さを詰めます。
4. 上止めを固定する:ファスナーの上止め(スライダーの上部の金具)が動かないよう、ペンチでしっかりと挟んで固定します。この状態で上止めがずれるのを防ぎます。
5. 余分なテープをカットする:上止めからテープ端までを数センチ残してハサミでカットします。これで余分なテープとエレメントが取り除かれ、ファスナーの長さが短くなりました。
6. 新しい上止め・下止めを取り付ける:必要な場合は新しい上止め(スライダーが抜けないようにする金具)と下止め(ファスナーの端を固定する金具)を取り付けます。特にビスロンファスナーはプラスチック製の止め具専用部品が市販されているので、用意した上止めパーツをスライダーの位置に合わせて設定し、ペンチでしっかり留めます。
7. 仕上げの確認:スライダーを上下に動かし、ファスナーがスムーズに開閉できるか確認します。テープの端がほつれていないか、留め具がしっかり固定されているかをチェックし、必要であれば布用接着剤で補強して完了です。
下止めの取り外し
オープンエンドタイプのプラスチックファスナーでは、まず下止め(ファスナーの開閉部下方の金具)を取り外します。ペンチで下止めを強くはさみ、動かすか外しておきます。これによりスライダーが取り外せるようになります。
クローズドエンドタイプの場合は、ファスナーの下が縫い付けられた状態なので、下止めを外せません。その場合は上止めから数センチ上を切り落とし、サイドから必要なエレメントを除去して上止めを取り付け直す方法になります。
余分な歯(エレメント)の取り外し
印をつけた長さまで到達するように、余分なエレメントを外します。ビスロンファスナーの場合は、喰切をエレメントの列に沿わせて歯を1つずつ分解します。コイルファスナーの場合は、エレメント自体を切るのではなく、糸を切って一部を除去するか、服用の糸切り鋏でテープとエレメントをまとめてカットする場合もあります。
印から少し余裕を持ってエレメントを抜くのは、上止めを取り付ける際のスペース確保のためです。作業中はゆっくりと確実に歯を外していき、テープが傷まないよう注意しましょう。
上止め・下止めの取り付け
エレメントを取り除いた後は、新しい上止め金具を取り付けます。ビスロンファスナー用の上止めパーツを用意しておくと便利です。上止めをスライダーすぐ下にセットし、ラジオペンチでしっかり挟んで固定します。
コイルファスナーの場合は、新しい上止めを使わず折り返し部分を返し縫いしても構いませんが、金具が欲しい場合は同様にプラスチック製の上止めが市販されています。
下止めが必要な場合は、ファスナーの一番下に再度取付けます。金属製の下止めを使うか、糸で縫い止めてもよいでしょう。
仕上げと確認
調整後、実際にスライダーを上下させてファスナーがスムーズに動作するか確認してください。スライダーがうまく歯に噛み合わない場合は、上止めの位置がずれている可能性があります。ペンチで再度締め直し、位置を調整しましょう。
また、テープの端はほつれやすいので、布用接着剤で端を固めておくと安心です。これでプラスチックファスナーの長さ調整(短縮)は完了です。
プラスチックファスナーを延長する方法
逆に、ファスナーを長くしたい場合の方法もあります。ただし金具やテープを追加でつなぐ必要があるため、短くするより少し手間がかかります。
簡単な方法の一つは、ファスナーエクステンダーパーツを使うことです。ファスナーエクステンダーとは、スライダーの下に取り付ける延長パーツで、簡単にファスナーに数センチを追加できます。手芸店やネット通販で販売されていることがあるので探してみましょう。
また、別の同じ種類のファスナーをつなげる手法もあります。たとえば、2本のファスナーを縫い合わせて一本の長いファスナーにする方法です。端を重ねてしっかり縫い合わせれば、長めのファスナーとして使用できます。ただし角度や歯位置のずれに注意し、滑りにムラがないか確認が必要です。
いずれの方法でも、延長部は多少厚みが出るため、使用するポーチや洋服に厚みが出ても問題ないか事前に確認しておくと安心です。
【注意】ファスナーを無理に長くしようとすると、スライダーの可動に支障が出ることがあります。延長の際は、新旧パーツの結合部を丁寧に固定し、スライダーがスムーズに動くかよく確認しましょう。
プラスチックファスナーの特徴と金属ファスナーとの違い
プラスチック製ファスナーと金属製ファスナーでは、素材特性や長さ調整方法に違いがあります。以下の表で主な違いをまとめました。
| 項目 | プラスチック(コイル) | プラスチック(ビスロン) | 金属 |
|---|---|---|---|
| エレメント素材 | ナイロンのコイル | 樹脂(射出成形) | 金属 |
| 調整の主な方法 | コイルを切る・折り返し | エレメントを外し、新しい上止めを付ける | エレメントを外し止め具を移動する |
| 難易度 | 非常に低い(手軽) | 低い(工具を使用) | やや高い(固い素材) |
| 特徴 | 柔軟・軽量 衣料向き |
丈夫・軽量 バッグ向き |
高耐久 厚地向き |
プラスチックファスナーは軽量で加工しやすいのが利点です。特にコイルタイプは糸でつながった構造なのでハサミで簡単に切れ、失敗しても縫いしろで調整できる場合があります。
一方、金属ファスナーは重厚で丈夫ですが、エレメントをひとつずつ外すには金属の強度を破壊しないよう注意が必要です。調整には専門工具や丁寧な下準備が求められます。
プラスチックファスナーの利点
・軽量で洋服や小物に使いやすい
・豊富なカラーバリエーションでデザインの幅が広い
・水や錆に強く、アウトドア用品向き
ただし強度面では金属に劣るため、重い荷物を扱うバッグなどには金属ファスナーが使われることもあります。
調整後のトラブル対処法
ファスナー調整後に起こりやすいトラブルと対処法を確認しておきましょう。
スライダーの不具合
調整後にスライダーが引っかかったり外れたりする場合は、上止めの位置がずれていないか確認します。上止めがゆるいとスライダーが外れやすくなるため、ペンチで噛み込みを強く挟み込んで固定し直してください。
また、スライダー自体が古い場合は動きが悪くなることもあります。新品に交換することを検討しましょう。
テープのほつれ
テープをカットした端は糸がほつれてきやすいです。ほつれ防止には、布用接着剤を端に塗って固めたり、糸で縫って補強する方法があります。特にプラスチックファスナーのテープは合成素材なので、軽くライターで炙って糸を溶かし固めるテクニックも有効です。
長さが合わないとき
再度測り直しても仕上がりの長さが違う場合は、その場で修正できることがあります。余分に切りすぎて短くなった場合は延長パーツを追加する方法を検討し、逆に長すぎる場合は再度エレメントを外して調整し直してください。
また、調整によって引き手(スライダー)の向きが逆になっていると、開閉がしにくくなります。向きが正しいかどうかも併せて確認しましょう。
まとめ
プラスチックファスナーの長さ調整は、専用工具を使えば初心者でも手軽にできます。ミシンを使わない方法で、不要なファスナーを再利用したい場合や、ちょうど良い長さのファスナーがなかった場合に役立ちます。
ポイントは「正確な計測」と「丁寧な作業」です。まずは短くする場合のステップを確認し、ゆっくり進めてください。延長したい場合も、キットや別のファスナーの連結を利用すれば対応可能です。
今回ご紹介した最新のテクニックや道具を活用すれば、従来よりも簡単かつ確実に長さ調整ができます。ぜひ実践してみてください。
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